この建物は瀬戸内海の島の一つである宮島の門前町にあった町屋です。建てられたのは18世紀末ごろで、二階の出窓の出格子やその下の板庇(ひさし)にその時代の特徴が見られ、屋根は勾配が緩く軒の出が深くなっています。
また、土地の狭い宮島では側壁を背中合わせに作るため、妻側の屋根の突き出しがほとんどありません。奥の座敷は明治初年に建てられた別の建物を古い建物の中にはめ込んでおり、材料を運ぶのも大変だった島の事情をよく示しています。
館内には初期伊万里から初期色絵(古九谷様式)・柿右衛門様式、鍋島様式等の名品が揃い、古伊万里の世界を一望することができます。
“用の美”とは、民藝運動の創始者であった柳宗悦によって提唱された、日常で使用する生活雑器の中に宿る美しさを意味します。名もなき職人たちの手仕事によって生み出された品物の中に美を見出そうとする民藝運動は大正15年(1926)に柳宗悦らによって、「日本民藝美術館設立趣意書」を発表したことが運動の始まりとされています。人の暮らしを豊かに彩ってきたやきものも「民藝」を構成する作品となっています。
本展では、やきものの中の用の美に焦点を当て、柳宗悦などとともに民芸運動に参加した作家の作品を松濤園陶磁器館のコレクションの中からご紹介します。また、伊万里焼や中国朝鮮の作品もご紹介します。
「草花図扁壷」河井寛次郎
「染付波千鳥文猪口」初期伊万里 1640-60年代
松濤園
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