三之瀬御本陣芸術文化館は、独立美術協会の重鎮として活躍した須田国太郎の作品を中心に、日本近現代の芸術家の作品を展示しています。また建物は、江戸時代に対馬藩一行など多くの要人が宿泊所として使用した歴史と趣きのある「本陣」の外観を復元したものです。
今年生誕100周年を迎える、広島の洋画壇をけん引した岡崎勇次(1924-1991)の画業に迫ります。
岡崎は広島県因島に生まれ、呉市の阿賀小学校、竹原市の忠海中学校で学び、海に囲まれて育ちました。戦時下の青年期には、大阪で海軍予備学生となり、戦後は亡くなった多くの仲間達にすまないという気持ちを抱きつつ、郷里広島で教員をしながら画家としての道を歩みます。現場での写生を重視していた岡崎は、瀬戸内や北の海など様々な場所を取材し、多様な様相を見せる海を画題に多くの作品を残しました。
公害と海をテーマにした“幻煙シリーズ”は、黒を基調に抽象的な力強いタッチで構成され、怒りや悲しみが感じられます。また「翔・北転船」や絶筆の「北の港」は、岡崎が晩年、毎年のようにひとり旅で、厳寒期の東北や北海道を取材した時のもので、白を主体に極寒の海が描かれています。暴風雪に身を置いて写生するその壮絶さからは、自分に厳しさを課すことによって本物の厳しい北の海を表現する、といった強い意志が感じられます。
岡崎は25歳で光風会、27歳で日展に初入選を果たして以降、受賞を重ね、両会を主な活動の場としました。42歳の時に画塾“グループいしがき”を創設。最盛期には100名を超える塾生が在籍し、優秀な門下生たちが巣立ちました。また、広島大学や安田女子短期大学で教鞭をとり、52歳からは広島修道大学教授に着任し、後進の育成にも励みながら、広島の美術界をリードしていきました。
国内の取材スケッチ以外にも、36歳の時にフランスでの留学も経験している岡崎は、その後も海外へのスケッチ旅行に多く出かけました。本展では、ご遺族のご協力の下、国内外に取材したスケッチブックも初公開いたします。
岡崎勇次 「アテネ・ビザンチン教会」 1980年 水彩・紙
岡崎勇次 「日新製鋼」 1972年 水彩・紙
岡崎勇次 「広 東洋パルプ」 1973年 水彩・紙
三之瀬御本陣芸術文化館(須田国太郎常設展示館)
公益財団法人 蘭島文化振興財団 三之瀬御本陣芸術文化館 〒737-0301 広島県呉市下蒲刈町三之瀬311番地
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